Mikuriya Design Office Co.,Ltd.



言葉の力を考える。
[2001年02月07日号]


■物言えぬ人々。

colum32.jpgデザインの制作課程ではあんなにうるさかった“担当者”君、クライアントの前に立つととても従順になる。同じ人とは思えない。相手の言うがまま、成すがまま…あれほど語ってくれた屁理屈の勢いはどうした!コンセプトのところ、ちゃんとフォローしてよぉ〜って情けない経験をしたクリエーターは多いだろう。モニターの前でうなずいている貴方、こういう輩とどのように付き合っておられるのか?銭のためと割り切り“やっぱそうですよね〜”なんて自らの前言をひるがえし、うすら寒い笑みをうかべたりしてはいないだろうか…

このご時勢、へたな事を言ったら自分の首が危ない。最初のうちは“本当はそうじゃないんだけど”という反骨精神が基礎部分にあっての愛想笑いなのだが、周囲の行動がそうであると“ひょっとしてこれでいいのかも…”そして“コレデイイノダ!”と思えてくる。良いのか?良くない!あれほど自らの創造物に思い入れがあった自分が、いい加減なところで妥協する人間になってきている…脳のシワが1本ずつ伸びていく恐ろしい病だ。アホは伝染するノダ!

ともかく、気合いの入った貴方の言葉が聞きたい。たとえ間違っていても嘘であっても乗ってやろうじゃないか。解ってるよ、挙足取ったりしないから。“勢い”のある空気が欲しいだけなんだ。


■“いいのが出来ました!”Story.


当サイトのBBSに登場する“Ben”さんにまつわるエピソード。
かつて同じ会社で働く先輩、後輩の仲。私が入社して3年目、彼は3ヶ月目。小さなシールのデザインなどをまかせていたある日、“いいのが出来ました!”と作品を持って来る彼。“どこがいいのかさっぱりわからん”私。
しかし彼の言葉には力があった。自信に満ちあふれていた。“なんかいいでしょう!?”との言葉に“ひょっとしてこれでいいのかもしれん…”と思えてきた。果たしてそのデザインはめでたく決定、世に出る事となったのだが、この時私は“自信を持って言い切る事”の大切さを学んだし“説得される事”の心地よさを感じた。ある意味、価値観の多様性を思い知った出来事でもあった。
そんな彼もいまでは敏腕ディレクター。若い連中の作品に“どこがいいのかさっぱりわからん”と嘆いているのかも…かくして歴史は繰り返すのであった。でも今の若いクリエーター達、言葉に勢いあるのかなあ?


■説得されたい人々。


失礼を承知で言わせていただくと、クライアントはデザインに関しては素人だ。だからこそ当方の商売が成り立つわけで…。で、出来上がったものについてはあれこれ言うのだが、その大部分は主観、思いつき。ほとんど言いがかり状態なので全てについて“仰せのとおりに…”とばかりに修正しなくても良い。

それより大事なのは、なぜこのような表現になったのか、幹の部分を説明し“説得”する事だ。想い入ればかりが先走り、いろんな考えが頭の中を巡っているオーナーは、やりたい事はあるんだけれど茫漠として要領を得ない。絵にならない。そりゃそ〜だ、素人だもの。溜まりきった想いは脈絡のない断片的な言葉となって開いた口から流れ出す。ぐじゅぐじゅになったその中でいるもの、いらないものを選り分けて“あなたのやりたい事はこんな形じゃないですか?”と提示してみせるのがデザイナーの仕事だ。相手も賢い大人だ(と信じたい)。筋が通った話には“なるほど!”と感心してもらえるだろう。実は説得されたいのだ。自分の想いを形にするために、楽になりたいがために…

300円で売るまんじゅうの企画を依頼されたことがある。要望をすべて受け入れて制作すると、パッケージだけで100円掛かってしまう勘定だ。これでは利益が上がらないのでもっと簡便、安上がりなパッケージと販路拡充の提案をし、納得していただいた。これが包材メーカーの営業君だったら、受けて納めてハイおしまい。

“やらない方がいい”と説得するのもデザイナーの仕事なんじゃないか。結局のところ、クライアントの利益に繋がる方策を講じる事がデザインの仕事。作ることばかりでなく、壊すことも時として前向きな仕事なのだ。これが解ってもらえる粋な人、このごろ少なくなった気がする…


■有言実行

ゆ〜てもうた!と後悔した経験、少なからずお持ちだろう。人に言ったからには実行しないと格好悪い。嘘つき呼ばわりされたくない。だからなんとしても実現に向けて努力する。この神経はまともだ。
有言不実行、言うだけ言って実行しない、その事に良心の呵責もない人は政治家向きだし、不言実行できる“出来た”人は坊さん向けで、私のような油断もスキもあったもんじゃない人間には“自分で自分を追い込む”事がモチベーションを高める唯一の方法なのだ。自分のケツをひっぱたくためにとにかく自分の考えを話す。それについて色んな意見をもらうことで自分の位置がまともかどうか計るんだが、否定的な意見を頂いても素直に方向転換はしない。話す時点で腹は決まっていて、“退路を断つ”ことが目的なんだ。
で、言ってしまおう!“3月末に1週間の休暇をとるぞ〜!南の島にいくぞ〜!”さあ、退路は断たれた。楽しいバカンスが待っている!(本文内容とちょっとニュアンスが違う気がする…)






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